『STOP受動喫煙新聞』第45号(’24年1月発行)掲載=脱法的営業が常態化する「喫煙目的店」②=「主食」提供を認める法の矛盾
=脱法的営業が常態化する「喫煙目的店」②=「主食」提供を認める法の矛盾
公益社団法人 受動喫煙撲滅機構 理事
前神奈川県知事・参議院議員
「国際基準のタバコ対策を推進する議員連盟」幹事長 兼 事務局長
松沢 成文
前回に続き、脱法的営業が常態化する「喫煙目的店(施設)」の問題について考察します。
この「喫煙目的店」は、施設の屋内において喫煙をする場所を提供することを主たる目的とし、併せて客に飲食をさせる営業を行う施設と定義されます。しかし、あくまでも「喫煙を主たる目的とするバーやスナック等」として位置づけられていることから、「通常主食と認められる食事を主として提供するもの」は除かれています。
そこで、この「通常主食~提供するもの」の具体的な意味が問題となってきます。
脱法的な矛盾その1 ランチなら「主食」可?
以下、厚生労働省がまとめた『改正健康増進法の施行に関するQ&A』(※1)を参考に見ていきましょう。
まず「主食」とは、「社会通念上主食と認められる食事をいい、米飯類、パン類(菓子パン類を除く。)、麺類等が主に該当」するとされています。この点はよいでしょう。
しかし次に、ランチ営業を行う場合においては、「通常主食と認められる食事」を提供することは認められるとされています。なぜランチ営業は認められるのでしょうか?
この理由について、厚労省のQ&Aには書かれていませんが、東京都保険医療局のウェブサイト『とうきょう健康ステーション』では、ランチ営業の時間のみ主食にあたるものを含む食事のメニューを提供することは、「『主として提供』には含まれないため」可能であると説明しています(※2)。
喫煙を主たる目的とするバーやスナックは、夜の営業が中心になるため、ランチ営業は〝例外〟で、ランチでの主食の提供は「主として提供」したことにはならないという理屈なのでしょう。しかし、昼の時間帯であっても受動喫煙による健康被害の発生を避けなければならないのは当然のことなので、ランチでも主食の提供は禁止すべきです。
脱法的な矛盾その2 出前・レンジは可、
何のための規制か?
さらに、自前で調理するものではない、出前による提供や、電子レンジで加熱するだけなら、主食の提供も可能とされています(※3)。こうなってくると、何のために飲食店での喫煙を原則禁止としたのかわからなくなってきます。実際に私が潜入取材をした都内大手の喫茶店チェーン店でも、電子レンジで調理したパスタやサンドイッチなどの主食を堂々と提供していました。
「喫煙目的」なら主食は出すな
「望まない受動喫煙を防ぐ」という健康増進法本来の趣旨からすれば、あくまでも「喫煙目的店」はシガーバーのような「喫煙が主目的」であり、飲食はお腹を満たす目的ではない=主食とならない、調理の必要がない簡単なおつまみ・スナック類等とお酒を提供するだけの店舗に限定しなければなりません。
次回は、喫煙目的店のもう1つの条件となっている「タバコの対面販売を行うこと」について取り上げます。
(’23年12月18日記)
※1 『改正健康増進法の施行に関するQ&A』14ページ「6 喫煙目的施設関係」「(2)喫煙を主目的とするバー、スナック等」より。
※2 『とうきょう健康ステーション』「受動喫煙対策に関するよくあるお問合せ」→「3 喫煙室の種類と技術的基準 喫煙室の種類」A56より。
※3 『改正健康増進法の施行に関するQ&A』15ページより。
’23年12月7日、参議院外交防衛委員会でJTのロシア事業について質問する筆者

☆本稿掲載の『STOP受動喫煙新聞』45号では、「用語事典」を併載、「喫煙目的店」違反の実例を掲載していますのであわせてお読みください。
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