『STOP受動喫煙新聞』第42号(’23年5月発行)掲載 横浜市は関内駅など主要駅の屋外喫煙所を改善せよ!②
横浜市は関内駅など主要駅の屋外喫煙所を改善せよ!②
公益社団法人 受動喫煙撲滅機構 理事
前神奈川県知事・参議院議員
「国際基準のタバコ対策を推進する議員連盟」幹事長 兼 事務局長
松沢 成文
前回(41号)では、自治体により駅の周辺などに設置されている屋外喫煙所の問題に焦点を当て、まず昨年の内閣府の調査結果から、「受動喫煙が不快」と答えた人が8割超で、被害に遭う場所では「屋外喫煙所の近く」という人が4割弱と多くいることをあげ、しかし横浜市では、関内(かんない)駅や横浜駅東西など、主要駅の出入口付近に喫煙所を多く設置している問題を述べました。
受動喫煙を無視する部署
先述の調査でも明らかなように、屋外喫煙所からはタバコの煙が漏れ出ており、駅利用者・通行人に受動喫煙、健康被害を与えていますが、横浜市は市民の苦情や受動喫煙撲滅機構による再三再四の申し入れにも関わらず、喫煙所の運営をいまも続けています。
前回その理由として、横浜市の公設喫煙所の担当部署(資源循環局 街の美化推進課)は、健康に関する部署ではないため、受動喫煙の被害に意識がないこと、またJTが喫煙所1カ所につき数百万円の建設費用を提供、そのため「多くの喫煙者に吸わせたい」人通りの多い所に設置していること、などについて言及しました。
では、健康増進法にも違反しているこの由々しき事態を変えるためには、どうすればよいのでしょうか。
タバコ臭は遠くまで及ぶ
’21年2月、京都女子大学生活福祉学科より、「屋外の開放型喫煙所から拡散するタバコ煙の状況」という論文が発表されました(※1)。論文中の実験によれば、屋外であってもタバコ煙が高濃度で周囲に拡散し、なんと喫煙場所から水平距離で18m離れた所でも、PM2・5が環境省の大気環境基準を上回ったこと、また21m離れた施設の利用者からタバコ臭の指摘があったことが記されています(※2)。この論文の実験対象は仕切りのない開放型喫煙所ですが、いちおう壁のある屋外喫煙所でも、横浜市など大半の喫煙所は、本紙40号1面の特集で図示しているように隙間が多い不完全な構造なので、数m先でも通行人や付近にいる人々が受動喫煙の曝露を受けるのです。
このような具体的な調査があるにもかかわらず、屋外喫煙所の見直しがされないのは、一体なぜなのでしょうか……?
その理由として、「屋外喫煙所に関しては、政府による具体的な基準が存在していない」ということが考えられるのです。
調査をしようとしない政府
実は、これまで政府は、屋外喫煙所による受動喫煙被害の実態に関しては、調査を実施していません。その理由は、〝屋外は、風向きや天候などで条件が変化し、科学的なデータの積み重ねが難しい〟と(政府は)考えているためです。
改正健康増進法においては、屋外も含めて〝受動喫煙を生じさせないこと〟と定められています。しかしその条項は、公共施設の屋内の規制と違って、罰則のない「配慮義務」にとどまっています。その理由は、まさにこの消極的姿勢が政府の根底にあるからだと言わざるを得ません。
国会で調査を要請する
そうであるならば、私は国会議員の立場から政府に対して屋外喫煙所による曝露状況を調査するよう、問い質していきます。事実、屋内喫煙所に関しては煙が漏れないための具体的な基準が設けられ、様々な規制が行われています。受動喫煙の被害を拡大させる屋外喫煙所の見直しに向けて、まずは科学的データをしっかりと積み重ねることで、具体的な数値規制へとつなげてまいります。
受動喫煙の「固定化」を防げ!
また、JTが助成を行い、行政と連携をして屋外喫煙所を整備することは、国際条約「タバコ規制枠組み条約(FCTC)」に明白に反しています。このような状況が続けば、受動喫煙を発生させる場所の「固定化」を招き、不完全な分煙の既成事実化となる可能性があります。
そこで、行政が積極的に屋外喫煙所を設置する方向ではなく、喫煙禁止区域の拡大や屋外喫煙所の廃止に取り組んだ場合には、政府として財政的なインセンティブ(動機付け・見返り)を自治体に与える措置も必要であると考えられます。
改正健康増進法の全面施行から丸3年になりますが、法律の不十分な点を突いて、受動喫煙被害が横行する事態も発生しています。国会議員の立場からしっかりとこうした問題に今後も取り組んでまいります。
(’23年3月17日記)
※1 同大生による卒業論文。大和浩教授も依頼を受け測定に協力している。
※2 大和教授による同様の実験では25m離れた場所でもPM2・5が測定されている(本紙20号)。また測定器より敏感な人の嗅覚(きゅうかく)では40mでも感じられたことがあるとのこと。
’23年3月9日、参議院文教科学委員会で質疑を行う筆者
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