『STOP受動喫煙新聞』第41号(’23年1月発行)掲載 横浜市は関内駅など主要駅の屋外喫煙所を改善せよ! ①
横浜市は関内駅など主要駅の屋外喫煙所を改善せよ! ①
公益社団法人・受動喫煙撲滅機構 理事
参議院議員・前神奈川県知事
「国際基準のタバコ対策を推進する議員連盟」幹事長 兼 事務局長
松沢 成文
内閣府は’22年11月4日、「たばこ対策に関する世論調査」の結果を公表しました。これによると喫煙者のタバコの煙を「不快に思う」との回答は、「どちらかと言えば」を含めて83・3%にもなり、また、政府への要望では「受動喫煙対策の強化」が48・3%で最多となっています。
「屋外喫煙所が不快」多数
さらに、タバコの煙を「不快」と答えた人に、その具体的な場所を聞くと、「屋外喫煙所の近く」が39・4%と4割近くに達しています。この数字からも、屋外喫煙所からの受動喫煙被害の防止が喫緊(きっきん)の課題であることが分かります。
本紙でも前40号から大きく取り上げていますが、横浜市にはJR関内駅南口側にある2カ所の屋外公共喫煙所の他、横浜駅東西両口や桜木町駅南口のように、多くの通行人が通る歩道に沿って設置されている屋外喫煙所が散見され、市民からも多くの苦情が寄せられています。
問題ある設置の2つの理由
ではなぜ、周囲への煙の流出を防止することが不十分な構造の喫煙所が、市民の通行する動線に沿って設置されてしまっているのでしょうか。
それには主に2つの理由が考えられます。1つには、横浜市が屋外公共喫煙所を設置することの目的として、受動喫煙による健康被害よりも、吸い殻の不法投棄などを防ぐことに重点をおいていること。2つ目には、日本たばこ産業株式会社(JT)が喫煙所設置費用の全額を負担していることです。
1.担当課が健康面の部署ではない
まず1つ目の理由についてですが、受動喫煙撲滅機構の質問と提案に対し、横浜市はこれまで「資源循環局 街の美化推進課」が対応してきました。
施設の禁煙化などの改正健康増進法を施行する市の部署は「健康福祉局」なのですが、屋外喫煙所を管轄する同課は「街の美化」との名称のとおり、吸いがら等のポイ捨て対策を担当する部署です。
機構への回答内容からも分かりますが、横浜市は関内駅や横浜駅、桜木町駅の周辺など、人通りの多い8地区を喫煙禁止地区に指定し、この地区内に、「吸いがら等の散乱防止や、タバコの火によるやけどや焼け焦げを防ぐことを目的として」喫煙所を設置しているということです。
つまり、「受動喫煙を防止し、市民の健康を守ること」は、重視されていないのです。
2.JT「より吸わせたい」に合わせた場所に
2つ目の理由ですが、喫煙所の設置に費用を出しているのは、横浜市ではなく、タバコの売り上げを増やし利益を上げることを目的とするタバコメーカー、JTなのです。JTが負担した費用は、関内駅南口2カ所の喫煙所では、それぞれ約436万円と270万円にも上っています。
そして、カネを出したJTからすれば、喫煙者がタバコを吸いやすい環境を整備することが必要・最優先になります。当然、受動喫煙の発生を避けるための「人の流れから離れた、目につきにくいような場所」ではなく、多くの人・喫煙者が通行する歩道の目立ちやすい場所に喫煙所を確保したいはずです。横浜市は、JTの意向に合わせて土地を提供しているのです。
では、この状況を変えるためにはどうすれば良いのでしょうか。次回は、健康増進法に違反し、受動喫煙による健康被害を拡大させる屋外喫煙所を見直すための方法を考えていきます。
(’22年12月5日記)
参議院文教科学委員会で質疑をする筆者(’22年12月)
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