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【二宮尊徳の成功哲学】シリーズ第1回 二宮尊徳に学ぶ

二宮尊徳に学ぶ

松沢成文

 

 皆さんは二宮尊徳(金次郎)をご存知だろうか? 薪を背負って本を読む金次郎像を思い浮かべる人もいれば、学ぼうともしないで、「古臭い」と思い込んでいる人も多いようだ。しかし、封建制の江戸時代に尊徳ほど創造的で合理的な改革を実践した人はいない。その改革理念は、現在にも受け継がれている。

 尊徳は、天明7年(1787)、相模国栢山村(現・小田原市)に生まれる。5歳のとき、酒匂川の氾濫で田地が流失し、裕福だった生家が没落していく。苦難のなか14歳で父が死亡、16歳で母が死亡し、家族(弟2人)は離散する。伯父に養われた尊徳は、捨て苗を空地に植え1俵の米を産出し、倍々増させ、「積小為大」(小さなことの積み重ねが大を為す)の原理を体得する。そして、24歳で田地1.4haに増大させ、生家を立て直し、村有数の篤農家へと成長する。

 尊徳が生きた時代は、江戸末期の政情不安な時期で幕藩体制にほころびが生じていた。また、商品経済が浸透していく中で人々の生活が困窮しており、それに加えて、冷害や洪水などの災害により各地で飢饉が発生していた。特に北関東や東北の農村は厳しい状況にあった。

 その中で尊徳は、生家を再興したノウハウを生かして、農村の再生に取り組む。綿密な現地調査により健全な生産能力が阻害されている原因を探り出し、それを是正することで潜在していた高度な生産能力を呼び覚ましていく。

 こうして尊徳は、「至誠」「勤労」「分度」「推譲」という理念を構築し、「報徳仕法」と呼ばれる改革手法を駆使して、600余村や武家、藩の再生を果たす。尊徳が実行した改革とは、現代の経営学が重視する個々の事例に即した問題発見と問題解決の手法にほかならない。江戸時代後期に、そうしたことを実践していたのだから、尊徳は時代のはるか先を行っている人物だったと思う。

 ときは流れ、尊徳の思想や業績は、明治維新後も多くの門下生や、直接の教えは受けていないものの、尊徳を師と仰ぐ人々により伝承されていく。特筆すべきは、渋沢栄一、安田善次郎、御木本幸吉、豊田佐吉、松下幸之助、土光敏夫など、明治から昭和にかけて、日本の近代資本主義経済を先導した著名な実業家たちの多くが、実践的な経営理念・経営哲学として報徳思想を信奉し、実践したことだ。このように報徳仕法と報徳思想は、近代日本経済の発展の礎となったのである。

 思えば、二宮尊徳は経営再建人であり、実業家であり、教育者であり、思想家であり経世家だった。また、良き家庭人でもあった。日本の新婚旅行の草分けは、坂本龍馬とおりょうの霧島への旅といわれる。しかし、遡ること43年、尊徳が藩主大久保忠真の懇請により、下野桜町領(現・栃木県)再建のための赴任途中、妻なみの今後の苦労を慮ってか、江の島や鎌倉を観光に訪れている。人を愛する尊徳の愛情の発露であったのだろう。それを日本で初めての新婚旅行に挙げる識者もいる。

 私は神奈川県知事の頃から、郷里の偉人でもある二宮尊徳の生き様や功績、思想を多くの県民や国民の皆さんに知ってほしいと思いで、これまでに『二宮尊徳の破天荒力』(ぎょうせい)『二宮尊徳の遺訓』(ぎょうせい)『教養として知っておきたい二宮尊徳』(PHP新書)を出版してきた。幸い、多くの読者の皆さんに支えられ、版を重ねることも出来た。また、これらの出版を契機に、全国各地で、二宮尊徳の講演活動も展開している。さらに、映画『二宮金次郎』(五十嵐匠監督)の製作にもつながった。これまでの取り組みが多方面に広がり有難い限りである。

 さて、改めて尊徳が生きた時代を考えてみると、いまの私たちの状況と類似していることが多いのに気付かされる。まずは、地震、台風、豪雨の多発という異常気象。加えて貧困、格差拡大が深刻化し、そこに感染症が覆い被さっている。人心も疲弊気味で、先行きの見えない不安感が高まっているのも同様だ。復興や再生が叫ばれているが、それは私たちの価値観や生き方そのものの問い直している。

 そうしたことから、いまを生きる私たちが、尊徳の改革や生き様から何か学ぶことがあるのではないかという気がしてならない。そこで、これまでの私の著作の中から、ヒントになるものを選り抜き、「二宮尊徳の成功哲学」として、シリーズでお伝えすることにしたい。

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