受動喫煙の撲滅を妨害する「JT法」「たばこ事業法」…大幅改正の法案を国会へ提出
<『STOP受動喫煙新聞』第27号(2019年7月)=発行「公益社団法人 受動喫煙撲滅機構」掲載>
公益社団法人受動喫煙撲滅機構理事
参議院議員・前神奈川県知事
「国際基準のタバコ対策を推進する議員連盟」幹事長 兼 事務局長
松沢成文
去る5月17日、私自身の公約でもある『日本たばこ産業株式会社の完全民営化等に関する法律案(JT完全民営化法案)』を、希望の党と日本維新の会で参議院へ共同提出しました。
JTは〝政府の会社〟
JTは、表向きは〝民営の株式会社〟ではありますが、普通の民間企業ではなく、財務省が筆頭株主(3分の1の株式を保有)の〝政府の特殊会社〟です。ですので、受動喫煙防止をはじめとするタバコ規制は進まないし、「たばこ税」の増税も大胆にできません。財務省・JT・タバコ農家・タバコ販売店、そして、タバコ族議員がタバコ利権を形成し、日本の健康政策を蝕(むしば)んでいるのです。
タバコ利権撲滅への新法案
私たちが提出した法案は、その元凶となっている「JT法」=「日本たばこ産業株式会社法」を廃止して、国家保有株を全て民間に売却し、「たばこ事業法」そのものも大幅に改正して、タバコ利権をぶち壊すという大胆なものです。
主な内容(概要)は以下の通りです。
1 [趣旨]
①政府が株主としてJTとの利害関係を有しており、国民の健康の保持の観点からの「製造たばこ」規制の強化・たばこ税引上げの検討が十分に進んでいるとはいえない状況にある。
②政府がJT株を保有する必要性・JTを特殊法人として存続させる必要性の低下。
2 [政府保有株式の処分]
政府は、施行後3年以内を目途(めど)として、その保有するJT株式の全てを処分する。
3 [JT法の廃止]
政府は、JT株式の全部を処分したときに、「日本たばこ産業株式会社法」を廃止するための措置を講ずる。
4 [制度の見直し]
政府は、JTの完全民営化が完了した後のタバコ関連事業に係(かか)る制度について、次の方向で検討し、その結果に基づき、たばこ事業法の改正等の措置を講ずる。
①国産葉タバコについて、JTが全量を買い入れる仕組みを廃止し、買い入れるかどうかとその量は製造たばこ製造者の自由にする。
②「JTでなければ製造たばこを製造してはならない」とする仕組みは、たばこ税の保全・品質確保の観点から、適格性を有する者が製造できる仕組みに移行する。
5 [耕作者に対する措置]
政府は、国産葉タバコの買入れに関する前記4①の措置が葉タバコ耕作者に及ぼす経済的な影響の緩和(かんわ)のため、廃作・減反による減収の補塡(ほてん)(おおむね5年以内)、転作支援その他の必要な措置を講ずる(※財源はJT株売却収入を活用)。
6 [規制強化・税率引上げの検討等]
政府は、JTの完全民営化を契機とし、国民の健康保持の観点から、①国際的な水準を勘案(かんあん)した製造たばこ規制の強化・②製造たばこの消費の抑制を図るためのたばこ税引上げ、について検討、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
財務省ではなく厚労省へ
私が長年主張してきたこの政策が、こうして法案として国会に提出できたことは嬉しい限りです。本当の意味で、受動喫煙から国民の命と健康を守るためには、受動喫煙防止法を制定するだけでは足りません。たばこ事業法とJT法を廃止することでJTを完全民営化するとともに、「タバコ規制法」を制定し、タバコ行政に関する所管省庁を財務省から厚労省に移す必要があります。そうすることで初めて、健康政策の観点から、適切にタバコ事業を規制することができるようになるのです。
財務省・自民党の妨害に負けず成立へ
もちろん、これを審議、成立へもっていくのは、財務省や自民党の抵抗があり、難しいことは言うまでもありません。しかし私は、これからも政治家を続ける限り、この改革に取り組んでいく覚悟です。
(2019年6月10日記)
※『STOP受動喫煙新聞』注:「タバコ」は外来語なので基本カタカナ表記が正しいのですが、固有名詞である、社名や法令名、「たばこ税」・「たばこ事業法」による「製造たばこ」はそのまま表記しています。
<公益社団法人受動喫煙撲滅機構 https://www.tabaco-manner.jp/>