タバコリスクは PM2.5より大きい
<『STOP受動喫煙新聞』第5号(2013年6月)=発行「公益社団法人 受動喫煙撲滅機構」掲載>
公益社団法人受動喫煙撲滅機構理事
前神奈川県知事
筑波大学客員教授
松沢成文
最近、中国の大気汚染の問題が連日報道される中で、PM2・5という表記をよく耳にする。これは大気中に漂う直径2・5マイクロメートル以下の微小粒子状物質で、花粉の十分の一と小さく、肺の奥に入り込みやすい。工場の煙や自動車の排気ガスに含まれ、草木が燃えたときにも発生する。これが肺の奥深くまで入り込み、喘息や肺がん、肺気腫などを引き起こす恐れがあるそうだ。
そこで私は、大きな疑問を抱いていた。タバコの煙にはPM2・5は含まれていないのだろうか。化石燃料や草木が燃えることで発生するのであれば、タバコの煙にも当然含まれているはずだが、それを報道するメディアが見当たらなかった。
ところが、三月十日の日経新聞に「タバコPM2・5の塊」という画期的な特集が組まれた。その記事から引用しよう。
「自由に喫煙できる居酒屋のPM2・5の濃度は空気1立方メートル当り568マイクログラム。中国政府が最悪と評したときの北京市の大気とほぼ同じ水準だ」
「福岡市にある喫煙可能な喫茶店では300マイクログラムを超えた」
一~二時間しか滞在しない飲食店と大気汚染を比べるのは難しいが、飲食店の従業員は八時間は滞在する。こうした実状に対して、産業医科大学の大和浩教授は、
「屋外の汚染を怖がるのなら、喫茶店や飲食店を怖がってほしい」
「様々な調査から、受動喫煙による死亡リスクはPM2・5の値よりもはるかに高い。怖がるなら、明らかにタバコの方だ」
というコメントを寄せている。
もっともな話だ。こうした衝撃的な事実を目の当りにすると、受動喫煙防止法(条例)の制定が益々必要となってくる。公共的な室内空間は禁煙か完全分煙にしない限り、国民の健康は守れないのである。私たちは、今こそ国民運動を起こし、「タバコ規制枠組条約」に則ったタバコ対策を推進していくべきだ。私たちの身近に大きなリスクが存在していることを認識しなければならない。