労働安全衛生法改正案 ~労働者と政治家のギャップ~
<『STOP受動喫煙新聞』第4号(2012年11月)=発行「公益社団法人 受動喫煙撲滅機構」掲載>
公益社団法人受動喫煙撲滅機構理事
前神奈川県知事
筑波大学客員教授
松沢成文
先の国会で労働者の受動喫煙防止対策を盛り込んだ「労働安全衛生法」改正案が再度継続審議となりました。この法案は、昨年12月に国会へ提出された段階では、職場に「全面禁煙」か、高度な換気設備を備えた喫煙室以外での喫煙を認めない「完全分煙」を事業主に義務づけていました。しかし、飲食店やホテルといった業界団体からの反対を受け、この義務規定は削除され「事業者の事情に応じて適切な措置を講じる努力義務」へと修正されてしまいました。最終的には、「全面禁煙」や「完全分煙」は努力義務にすらならず、事業主が新たな対策を何ら講じる必要はない〝骨抜き〟の内容とされてしまったのです。これらを努力義務とするのであれば、少なくとも労働基準監督署がこの規定を根拠に立ち入り検査をすることが出来るので、事業主に対してもある程度のプレッシャーを与えることになります。
禁煙補助剤を販売する医薬品メーカーが「受動喫煙に関する屋内労働者の意識調査」(※)の結果を本年7月に公表しました。それによると、屋内労働者の81%が職場の全面禁煙、完全分煙を希望し、法律や条例による喫煙対策の義務化に屋内労働者の64%が賛成していると報告されています。国民の多くは実効性のある規制を望んでいるのです。
受動喫煙による健康被害をなくすためには、事業主による対策をしっかりと法律で義務付けなくてはなりません。労働安全衛生法が充実した内容になるように声を上げていきましょう。
(※調査結果は『STOP受動喫煙新聞』第4号(2012年11月)3面に掲載)