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No32【二宮尊徳の成功哲学】「成功と失敗の分かれ目」に学ぶ、感謝の経営

なぜ、成功を持続できる人と、一度は成功してもやがて失敗する人がいるのでしょうか。二宮尊徳は、その根本的な違いは、能力や才能ではなく、ただ一つ、「恩を忘れず、それに報いようとする心」、すなわち「報恩」の心を持つかどうかにかかっていると断言します。

尊徳は以下のように、成功と失敗を分ける唯一の法則について、極めてシンプルに語ります。

「事の成否は、恩を忘れないか恩を忘れるかにかかっている。前に受けた恩を忘れず、これに報いようと心掛ける者は、する事が必ず成功する。前の恩を忘れて、これからの恩徳をむさぼり取ろうとする者は、する事が必ず失敗する」(『二宮先生語録』斎藤高行著より)

これは、現代のビジネスにおける「ステークホルダー経営」の重要性を示唆しています。企業の成功は、顧客、従業員、取引先、株主、そして社会といった、数多くのステークホルダー(前に受けた恩)によって支えられています。その恩を忘れず、利益を還元しようとする企業は、ステークホルダーからの継続的な支持を得て、必ず成功を持続できます。逆に、その恩を忘れ、自社の利益のみを追求する企業は、いずれ信頼を失い、必ず失敗するのです。

さらに尊徳は、この「報恩」の精神を、日常生活の些細な行動にまで見出します。彼は、食後に食器を洗う行為を例に挙げます。

「もし、もう食事がなくなって次に使う当てがなければ、洗わずに放っておくに違いない。これは毎日使ってきた恩徳を忘れたものだ」

「たとい餓死しようというときになっても、やはりこれらを洗って戸棚にしまうとすれば、これは毎日使ってきた恩徳に報いるものであって、このような人は必ずその家を富ます」(『二宮先生語録』斎藤高行著より)

これは、たとえ逆境にあっても、未来への希望を捨てず、これまで自分を支えてくれたものへの感謝を忘れない姿勢の重要性を説いています。どんなに苦しい状況でも、お世話になった人々への感謝を忘れず、義理を尽くす。その誠実な姿勢が、やがて新たな道を切り開くのです。

この尊徳の「報徳」の精神は、兵庫県西宮市にある報徳学園によって、創立から100年以上にわたり、現代に受け継がれています。創立者である大江市松は、尊徳の思想に深く傾倒し、その教えを教育の根幹に据えました。

尊徳の教えは、ビジネスや人生における成功とは、決して自分一人の力で成し遂げられるものではなく、常に周囲への感謝(報恩)の心を忘れず、その恩に報いる行動を続けることによってのみ、持続可能になるという、時代を超えた普遍的な真理を私たちに教えてくれます。

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