書評『失踪日記』
松沢成文が、次世代の党の機関誌「ネクスト」で書評の連載を
を開始して好評を博しております。
5月号掲載分を転載しますので、ぜひご一読ください。
=========================
5月に入りました。
皆さん「五月病」は発症していませんか?
今回は落ち込んだ気分や思い詰めた気持ちを
スッと楽にしてくれるマンガ、
『失踪日記』をご紹介します。
作者の吾妻ひでおさんは70年代から
80年代にかけて美少女マンガなどで
一部マニアの方々から熱狂的な支持を受けた
漫画家ですが、ある日、執筆の重圧から
原稿を落としてしまいます。
それを機に抱えていた連載は全て終了。
悩んだ末に山中で自殺を図りますが死にきれず、
そのまま失踪してホームレスになって
しまいます。
そこからが面白い。野宿をしながらゴミを漁る
サバイバル生活を送り、ふとしたきっかけで、
なぜかガス配管工として就職。
やがて妻に見つかり家に戻りますが、
今度はアルコール中毒になってしまい、
治療病棟に強制的に入院させられ、
そこにいる人たちの様々な人生を垣間見ます。
本書はその実体験をマンガ化したものですが、
本当はシリアスなはずの話を実に見事な手腕で
笑いに昇華させており、楽しみながらページを
めくることができます。
そして、読後には
「人間、生きてさえいれば何とかなるよね」
そんな前向きな気持ちにすらさせてくれるのです。
手塚治虫文化賞マンガ大賞、文化庁メディア
芸術祭マンガ部門大賞など数々の賞を
総なめにした傑作です。
悩んでいる人はもちろん、そうでない人にも
お勧めしたい一冊です。
※次世代の党機関誌「ネクストvol.003」掲載