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「ロシアによるJT国有化の可能性はゼロではない」― 2年前の警告は現実になった

参議院議員 松沢 成文

11月5日、プーチン大統領は、JT(日本たばこ産業)のロシア現地法人4社をロシア企業による「一時管理下」に置く大統領令に署名した。所有権は形式上残るものの、JTは事実上、ロシア事業の経営権を失った。ダノンやカールスバーグは、同じ「一時管理」の末に巨額の損失を計上し、事業をロシア側に売却させられている。

私はこの事態を、2年前に国会で警告していた。

2024年6月6日の参議院外交防衛委員会。G7が凍結ロシア資産をウクライナ支援に活用する方向で協議していることを踏まえ、私は上川外務大臣(当時)にこう問うた。「ロシアは強烈な対抗手段に出るだろう。そうなったときに私が心配しているのは、JTのように日本政府とつながっている会社、これ一挙に国有化までされちゃう可能性も私はゼロじゃないと思う。だからこそ、政府はJTを指導し、ロシア事業から撤退させる必要がある!」

大臣の答弁は、「凍結資産の活用を前提とした御質問なので、お答えは困難」。それだけだった。

これに限らない。2023年5月の決算委員会以来、私は外交防衛委員会、質問主意書、記者会見と、あらゆる場でJTのロシア事業からの撤退を求めてきた。JTの完全子会社JTIは、ロシアのたばこ市場でシェア1位、年間4,000億円もの納税でロシアの戦費を支える企業だからだ。

2023年8月には、ウクライナ政府はJTIを「戦争支援企業」に指定し、その納税額は戦闘機約100機分に相当すると厳しく非難した。日本の政府系企業が、ウクライナから名指しで批判されたのである。しかし日本政府は一貫して「民間株主が3分の2を占める上場企業として自主的な経営判断に委ねる」と逃げ、JT社長は「事業継続に大きなネガティブ要因はない」と開き直った。その結果が、今回の資産接収である。

忘れてはならないのは、JTが普通の民間企業ではないことだ。財務大臣はJTの発行済株式の37.55%を保有する筆頭株主であり、JT法に基づく監督権限も持つ。この株式は国民の財産である。

市場の反応は厳しい。大統領令が公表された5日夜の夜間取引でJT株はストップ安水準まで急落し、翌6日の東京市場でも売り注文が殺到して買い手がつかず、ストップ安の売り気配のまま寄り付かない状態が続いた。損失は確定したのではない。いまも膨らみ続けているのだ。

ロシア事業はJTの調整後営業利益の約25%を占める。政府が受け取る配当は年間約1,560億円(2025年12月期)にのぼるが、これが減れば財政投融資の原資も細る。株価の下落と配当の減少は、国民の財産を大きく毀損する。政府は今になってロシアに抗議し撤回を求めているというが、国会で「国有化のリスク」を具体的に指摘された時には何もしなかった。その責任を免れることはできない。

だからこそ、私はあらためて提言する。政府は保有株式を売却し、JTを早期に完全民営化すべきだ。JTはいまや営業利益の8割以上を海外で稼ぐ、完全に海外事業に軸足を置いた多国籍企業である。そのうち約25%がロシア事業という、もっとも不安定で敵対的な市場に依存してきた。そうした企業の株式を政府が持ち続ける限り、JTは外交上の標的となり、国民は国際的なリスクを背負わされ続ける。

そして、たばこ事業の所管を財務省から厚生労働省へ移すべきだ。税収と配当のためにJTを「保護」する利権構造を断ち切り、国民の命と健康を守るたばこ政策へ転換せよ!今回の事態は、その必要性を何よりも雄弁に物語っている。

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