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No.37【二宮尊徳の財務戦略】「入るを量って出ずるを制す」に学ぶ、持続可能な経営の鉄則

企業の持続可能性は、その財務戦略の健全性にかかっています。二宮尊徳は、国家財政の再建を通じて、時代を超えて通用する財政運営の鉄則、「入るを量って出ずるを制す」の重要性を説きました。これは、現代の企業経営における、最も基本的かつ強力な原理原則です。

尊徳は以下のように、財政が破綻する根本原因を、この原則が逆転している点にあると指摘します。

「国の経費を定めるのに、入るを量って出ずるを制するのが昔の良法であった。末世の今日では、競って贅沢をするため国費が足らず、逆に出ずるを量って入るを定めるようになった」。(『二宮先生語録』斎藤高行著より)

これは、現代の「どんぶり勘定」や「赤字経営」への痛烈な批判です。収入を正確に把握し、その範囲内で支出をコントロールするのが健全な経営の基本です。しかし、先に支出ありきで、その穴埋めのために無理な売上計画や借入に走る企業は、いずれ破綻を免れません。

では、健全な財務戦略は、組織に何をもたらすのでしょうか。尊徳は、城の堀の水を例に、その好循環を説きました。

「国君が衰時の分度を守って、分外に生じる財貨を分内に入れるようなことをせず、それを興国の資金として(中略)衰えた国が復興して税収がもとどおりになるのを待つ」(『二宮先生語録』斎藤高行著より)

これは、利益の再投資による持続的な成長モデルです。景気が良い時に得た超過利益を、目先の経費に充てるのではなく、将来の成長のための投資に回す。この規律を守り続けることで、企業は常に繁栄を維持できるのです。

尊徳の高弟、斎藤高行は『報徳外記』の中で、蓄積(内部留保)の重要性をさらに強調しています。彼は、天災や人災といった「不慮の災難」は必ず起こるものであり、それに備えるための蓄積がなければ、国家(企業)は存続できないと断言します。

そして、古代中国の経典『礼記』を引用し、「三年の蓄えなきを国その国にあらず」という言葉を紹介します。これは、最低でも年商の3年分の内部留保がなければ、企業とは言えないという、現代にも通じる厳しい財務規律の指標と解釈できます。

尊徳の教えは、収入を正確に把握し、その範囲内で支出をコントロールし、生み出された余剰を未来のために蓄積・再投資すること、これこそが、いかなる時代の荒波をも乗り越え、組織を永続させるための、唯一にして絶対の鉄則であることを、私たちに示しています。

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