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No.36【二宮尊徳の国家論】「国家の衰亡は利権の争奪から」に学ぶ、組織崩壊の法則

なぜ、繁栄を極めた国家や企業は衰亡するのでしょうか。歴史を紐解けば、その答えは常に「内部」にあります。二宮尊徳は、幕藩体制が揺らいだ江戸時代末期を生き、多くの藩や村の再生に携わる中で、組織が崩壊する根本原因を、人々の心の問題、すなわち「利権の争奪」に見出しました。

尊徳は以下のように、国家が衰退する構図を、富者と貧者の双方の視点から描き出します。

「国家に盛衰や存亡があるのは、おのおのが理を争うことが甚しいからだ。富者は足るということを知らないし、世を救うという心もない」。一方で、「貧者は貧者で、何とかして己の利益をはかろうとする」

「こうして貧富ともども義を忘れて、願っても祈ってもできないような工夫ばかりして利を争っている」(『二宮翁夜話』福住正兄著より)

これは、現代の組織においても全く同じです。経営層が自らの利益のみを追求し、現場はセクショナリズムに陥る。このように、組織の構成員が、共に守るべき価値観(義)を忘れ、それぞれの利権(利)ばかりを争い始めるとき、組織は確実に衰退へと向かうのです。

では、組織が繁栄するためには、どのような経済観を持つべきなのでしょうか。尊徳は、儒教の経典『大学』の言葉を引用して、その本質を説きます。

「大学に、「国は利をもって利とせず、義をもって利とす」とあるが、これこそ国家経済の格言というべきものだ」(『二宮翁夜話』福住正兄著より)

これは、現代の「パーパス経営」の思想そのものです。目先の利益を第一目標とするのではなく、まず社会における自社の存在意義や倫理観(義)を確立する。その「義」を追求した結果として、利益は後からついてくるという考え方です。この「義」こそが、組織の求心力を生み、メンバーの利己的な行動を抑制する羅針盤となるのです。

尊徳の活躍が世に知れ渡ると、彼の元には全国各地から改革の依頼が殺到しました。彼は、桜町領(現・栃木県真岡市内)での成功体験を基に、多くの藩や村の再生を指導していきます。歴史を振り返れば、ローマ帝国の衰亡史を著したギボンが指摘するように、偉大な国家が滅びる真の理由は、常に「内部の堕落と腐敗」にありました。

尊徳が生きた江戸時代末期もまた、内部からの崩壊が始まっていた時代でした。彼の思想と実践は、単なる財政再建のノウハウではなく、人々が利己主義に走り、組織が内部から崩壊していく中で、いかにして共通の「義」を再建し、組織を再生させるかという、時代を超えた普遍的な問いに対する、一つの力強い答えだったのです。

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