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No.14【二宮尊徳の実践哲学】「大道は水、書籍は氷」に学ぶ、知識を行動に変える力

二宮尊徳は生涯を通じての読書家でしたが、単なる知識の蓄積を「論語読みの論語知らず」と厳しく批判し、「知識は実行されて初めて価値を持つ」という、極めて実践的な哲学を貫きました。これは、情報過多の現代を生きる私たちにとって、極めて重要な示唆を与えてくれます。

彼の思想を象徴するのが、『二宮翁夜話』(福住正兄著より)で語られる「大道は水、書籍は氷」という比喩です。尊徳は、以下のように述べています。

「大道(普遍的な真理や理論)は流れる水のように世の中を潤すが、いったん書物にまとめられると、もはや世の中の役に立たない『氷』になってしまう」(『二宮翁夜話』福住正兄著より)

そして、「この氷となった経書を世の中の用に役立てるには、胸中の温気でよく解かして、もとの水にして用いなければならぬ」と続けます。これは、現代ビジネスにおける「戦略」と「実行」の関係そのものです。どんなに優れた経営理論も、企画書や報告書という「氷」になったままでは価値を生みません。現場の熱意と日々の行動という「胸中の温気」で溶かし、「水」として組織の隅々にまで浸透させて初めて、その価値が発揮されるのです。尊徳はさらに、理論を「縦糸」、実践を「横糸」にたとえ、「横に日々実行を織り込んで、はじめて織物として役に立つのだ」と述べ、両者が一体となって初めて成果が生まれることを強調しました。

さらに尊徳は、実践に結びつかない知識は無価値であるばかりか、時に有害でさえあると警告、以下のように述べています。

「学問をしても、世を救い、世を益することに到達しなければ、よもぎやもぐらがはびこったように、世の中に用のないものだ。広がれば広がるほど世の害になる」(『二宮翁夜話』福住正兄著より)

これは、多くのビジネス書を読み、情報を集めても、それが自社の業績向上や社会貢献に繋がらなければ、それは単なる自己満足であり、むしろ中途半端な知識は組織を混乱させるリスクすらあるという、現代社会への鋭い警鐘です。彼は「仕事をする日数は至って少ないのだから、無用のことはしてはならぬ」と述べ、限られたリソースを実践に繋がる「実学」に集中投下すべきだと説きました。

この尊徳の「実学重視」の精神は、奇しくも近代日本の啓蒙思想家、福沢諭吉とも共通する普遍的な真理です。尊徳の教えは、知識を持つことと、それを現実に活かすことの間には大きな隔たりがあり、「『知っていること』と『できること』の間の深い溝を埋めるのは、『実行』以外にない」という、ビジネスにおける永遠の課題を、私たちに強く突きつけています。

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