『STOP受動喫煙新聞』第49号(’25年1月発行)1面掲載 国会で受動喫煙・タバコ問題を質疑=マスコミ多数が報道=
公益社団法人 受動喫煙撲滅機構 理事
前神奈川県知事・参議院議員
「国際基準のタバコ対策を推進する議員連盟」幹事長 兼 事務局長
松沢 成文
(構成:『STOP受動喫煙 新聞』編集局)
― 受動喫煙撲滅機構 理事 ―松沢成文議員の追及に石破首相が狼狽
国会で受動喫煙・タバコ問題を質疑=マスコミ多数が報道=
『STOP受動喫煙新聞』編集局より]
受動喫煙撲滅機構の理事・松沢成文参議院議員が、国会の質問で多くのタバコ問題を追及。その冒頭では、石破首相自身の喫煙と、受動喫煙を発生させない意識があるかの質問をしましたが、首相のしどろもどろの答弁に会場は大笑いの渦に、このことは多くのマスコミで報道されました。
しかし、その質問はほんの前置きで、その後に違反「喫煙目的店」の横行・JTの民営化とタバコ利権・国策会社JTのロシア支援といった本題の厳しい追及が続いたのですが、残念ながら各記事ともそれらには全く触れない偏った報道となっていました。
そこで今回は、松沢理事から寄せられた国会報告に加え、重要な記録として、タバコ問題の全質疑応答の文字起こしをあわせて報告します。
※連載『脱法的営業が常態化する「喫煙目的店」』前号掲載’24年6月の国への質問の政府回答は、次回掲載の予定です。

受動喫煙問題を首相に追及する松沢成文参議院議員=参議院サイトの動画より(字幕は自動)=
去る’24年12月16日、参議院予算委員会で、私(松沢)は石破茂総理大臣や関連閣僚に対して、日本のタバコ規制政策やJT(日本たばこ産業㈱)の「特殊会社」(※)としての在り方について、質疑を行いました。
委員会での私の質問の番では、まず軍事問題の質疑を行い、各大臣の答弁のあと、タバコ問題の質問に入りました。
そこでまず、石破総理がヘビースモーカーとして知られている点を踏まえ、一日にどれくらいタバコを吸うのか、また周囲の受動喫煙被害にどのように配慮しているのかを問いました。国防などのカタイ質疑応答のあとだったせいか、首相の答弁には会場から爆笑が起こりました。
その質疑応答を以下に記します(要旨。太字化は本紙)。
松沢成文(以下「松沢」) 次に、タバコ問題でちょっと気になる点があったんで、総理自身しか答えられないことでお聞きしたいのですが、総理はヘビースモーカーで有名ですけれども、大体一日にどれくらいタバコを吸うのですか。
そして、周辺の人々が受動喫煙の被害を受けないように、どのように気を遣っていますか。
内閣総理大臣・石破茂(以下「総理」) 多くの方からご指摘をいただきまして、一日数本まで減りました。ゼロになるまでもう少しかな、と思っておるところでございます。
受動喫煙につきましては、周りに人がいるようなところで吸うことはございません。それは、そういう方々の権利というものは最大限に尊重するということは、よく認識をしておるところでございます。
松沢 自宅でも吸わないんですか? 奥様、隣にいますよね。
総理 そのようなことが許容される状況にはございません。(一同、大爆笑)
松沢 もう少し具体的に伺いますが、では総理は、首相官邸の執務室でタバコは一切吸わないんですか? 官邸の建物の中で。そして政府専用機、ここでも一切タバコを吸ったことはないと、断言できますか。
というのは、「健康増進法」で、総理官邸を含む行政の全ての建物内は禁煙となっているからです。航空機内も当然、全面禁煙と、法律で定まっています。もし吸っていたら、総理といえども法律違反になるんですね。
これ、見ている人がいるからウソはつかない方がいいと思いますよ。いかがでしょうか。
総理 当然、法律は存じております。ですので、ここはその外、庭といいますか、そこであれば(喫煙できる)、という話なのですが、一歩出た途端にセンサーが鳴り響くとかいう話もございまして、なかなか世の中の人にご迷惑をかけない、あるいはセキュリティーを保つということは難しいことではあるが、決まりは守らねばならぬということでございます。
松沢 その遵法精神は大したものだと思います。
さて、総理はこれまで東南アジアと南米の外遊を行いましたが、実は、この外務省の随行員の公文書で、総理のタバコタイムのために喫煙場所を探すのに四苦八苦しているという報道がありました。
海外の公共施設は、ホテルも含め、ほとんど全面禁煙です。今、G20の首脳もほとんどが非喫煙者です。喫煙者は石破総理と、金正恩さんぐらいだと思うんですね。
総理、私は総理に嫌がらせを言っているのではありません。総理の健康と、周辺の人々の受動喫煙、そして世界のリーダーとしての振る舞いを心配して申し上げています。
総理、このさい思い切って、今だいぶ量は減ってきたというんですから、禁煙に挑戦してみたらどうですか。立憲民主党の野田代表も誘って。二大政党のトップがニ人ともヘビースモーカーというのは、ちょっと世界に向けていただけませんよ。周りにも迷惑かけないように、自分の健康も慮って、禁煙に挑戦してみたらどうですか。
総理 冒頭申し上げましたように、多くの方からのご指摘をいただき、今それに向けて努力をいたしております。ご指摘、まことにありがとうございました。(一同、苦笑)
松沢 強い意志があればできますので、頑張っていただければと思います。そうすれば、外務省の職員も少し仕事が減りますからね。

答弁する石破首相と大笑いする議員たち

松沢議員の質問に皆が俄然注目
法律違反店が横行 対応の不備を指摘
次に、改正健康増進法に基づく受動喫煙防止の実施状況について、本紙で連載している「喫煙目的店」の違反が横行していることを例に、厚労大臣に確認しました。地方自治体がコロナ対応を理由に指導を怠ってきた現状や、法律の曖昧さを指摘し、早急に改善すべきと訴えました。
松沢 改正健康増進法が成立して、飲食店は原則禁煙、または喫煙室の設置での禁煙が義務付けられました。しかし、「喫煙目的店」というラベルを貼っての、違反行為が横行しています。
こうした店に対して、行政は法律に基づき注意・勧告、罰則を適用しなければならないはずですが、地方自治体の保健所がコロナ対応で忙しいことを理由に、全く対応してきませんでした。
さらに、健康増進法の規定や定義が曖昧で、明確な基準に基づいて施設への指導ができないという問題もありました。
このままではザル法になってしまい、国民を受動喫煙の害から守れません。
厚労大臣、曖昧な健康増進法の規定や定義を明確化するとともに、地方自治体にしっかりと対応するように指導して通達を出すべきだと考えますが、いかがお考えですか。
厚生労働大臣・福岡資麿 受動喫煙の防止対策につきましては、まずそのルールを広く周知徹底するとともに、ご指摘ありましたように、保健所が指導監督する体制の整備を図ることが重要だと考えております。
これまでもずっと「喫煙目的施設」の解釈を(サイト等で)Q&A等で示してきたほか、保健所の体制について地方財政措置を講じてきたところでございますが、引き続き、自治体へ対策の実施を促してまいりたいと考えております。
また、ご指摘のように、一部の自治体におきまして、「喫煙目的施設」への該当・非該当について対応に苦慮している事例があると承っております。自治体の喫煙目的施設への指導状況について、自治体の協力も得ながらしっかり確認してまいりたいと考えております。
松沢 地方自治体も厚労省からそういう指導があれば非常にやりやすくなるということなので、早急にお願いしたいと思います。
このように、自治体への指導強化を進めるとの答弁がありましたが、はたして具体的な行動はどうか。引き続き注視したいと思います。

福岡資麿厚労相
民営化すべきJT タバコ利権で規制が進まない日本
続いて、日本のタバコ規制が進まない要因として、JTと財務省による「タバコ利権」をあらためて指摘しました。NTTや日本郵政の民営化の事例をあげ、タバコに公共性がない以上、JTも国の庇護による「特殊会社」を脱し、完全民営化を議論すべきだと提案しました。
しかし、石破総理は税収やタバコ農家への影響を理由に、〝慎重な姿勢〟を崩しませんでした。
私はこれに対し、彼らの勉強不足を指摘、民間企業となっても税収は確保できることを教示し、さらなる検討を求めました。
松沢 私は、日本で先進国並みのタバコ規制が進まないのは、JTと財務省のタバコ利権があるからだと考えています。
G20諸国でタバコ会社を「特殊会社」として政府・財務省が抱えているという国は、日本だけになってしまいました。しかし、タバコの製造・販売は、国が特殊会社として運営指導する公共性は、全くありません。完全民営化すべきであります。
NTTやJP(日本郵政)の民営化の議論は推進するのに、なぜJTだけは逃げるのでしょうか?
この話になると、財務大臣は「タバコ農家の保護のため」と、必ず言うんですね。
しかし、タバコ農家数、生産量ともに激減しています。JTができたときに7万8千軒あったタバコ農家が、令和6年度は2千2百軒てす。2万2千軒じゃないですよ。
こんな状況で、タバコ農家の保護のために、JTは絶対に民営化できない? ナンセンスですよね。
どうですか、総理。JTもNTTやJPと同じように民営化議論をしっかりやっていきましょう。株を放出すれば、2兆円以上の財源になりますよ。総理、いかがですか。
財務大臣・加藤勝信(以下「財務大臣」) 松沢委員ご承知のように、タバコ事業法においては、我が国タバコ産業の健全な発展を図り、もって財政収人の安定的確保および国民生活の健全な発展を資するとの目的規定が定められ、同法の中でJT、いわゆる「日本たばこ産業」が、重要な役割を果たしています。
また、この目的を達成するため、同法では、葉タバコ農家の経営安定を図るため、JTによる全量買取り契約を実質的に義務付ける、また、これと一体の関係にあるJTの国内タバコの製造独占を認める、製造独占の弊害を防止し、小売店の経営を安定させるため、卸売価格および小売定価の認可制を定めているところであります。
現在、JTについては3分の1(の株)を国が持っておりますし、それについての保有義務も法律によって課されていまして、それはこうしたJTの全量買取りや適正な業務運営を担保するためであり、完全民営化については、葉タバコ農家、小売店の影響など様々な考慮すべき課題を総合的に判断し、慎重に検討していくことが必要であるとされ、これまでそうした姿勢を取っております。
いま松沢委員ご指摘のように、確かに耕作者、耕作面積は大幅に減少していますが、一方で、収量や品質の安定化の取組にそれぞれが努力をし、一戸当たりの生産面積の増加、面積当たりの労働時間の短縮など、生産性向上の取組は継続的に実施された結果、特に東北・九州・沖縄の産地では基幹産業の一つであると承知しております。したがって、タバコ産業は依然として地域経済には一定の役割を果たしているところであります。
松沢 加藤大臣、前に厚労大臣だったときに言っていたことと、ぜんぜん違う、論理矛盾じゃないですか。これ、利益相反ですよね。厚労省と財務省じゃ。
総理、私が聞きたいのは、NTTやJPの民営化議論は進めるのに、なぜJTだけ民営化議論を進めないのか。JTが作っているタバコに公共性はあるのか。NTTの通信、JPの郵便の方がよっぽど公共性があるのに民営化議論を進めているでしょう。なぜですか。これは総理しか答えられない。きちっと答えてください。
(ここで昼休憩、約一時間後に再開)
財務大臣 JT株をさらに売れないかという午前中のご質問でございました。これについては、財政審でも現時点での同株式のさらなる売却を適当と判断すべきではないとされているところでございますし、また、先ほど申し上げたように、今、葉タバコ農家、戸数こそ減っておりますけれども、一戸当たりの生産額、直近では約740万円という大変な規模も持っている、そうしたことを、様々に考慮すべきことを総合的に判断すれば、JTの完全民営化については慎重に検討していくことが必要だと考えております。
松沢 総理ね、JT、JP・日本郵便、NTT。これ、みんな政府の「特殊会社」ですよ。なぜJPやNTTの民営化議論はどんどんやっているのに、JTの民営化議論はやらないのかと。タバコに公共性がありますかと。通信やあるいは郵便の方がよっぽどユニバーサルサービスとして公共性があるのに、こちらの民営化はやっているのに、何でタバコの民営化の議論をしないんだと。
総理じゃないと答えられないんです。言ってください。
総理 それは、いま財務大臣がお答えしたとおり、葉タバコ農家というのは多くあります。あるいは、それで生計を立てる、タバコを売って生計を立てておられる方もたくさんあります。そして、貴重な税収源でもある。だからいいんだということを申し上げるつもりはございません。ただ、そういうような形で、国家の財政というものは非常に厳しい中で何とかやりくりをしているということでございます。だから受動喫煙があっていいとか、健康を害していいとか、そんなことを申し上げているつもりはなくて、そういうようなのに対する害を最小限にしていきながら、同時に国家の税収というのも考えていかねばならぬ。地方もそうです。そしてまた多くの方々の生計を支えるということを総合的に判断いたしておるものでございまして、単純に郵便とかそういうものと同列に論じるものではないと考えております。
松沢 全く勉強していませんね、総理。民間会社になっても税金払うんです。フィリップモリスも払っているんですよ。税の問題、関係ないですね。

加藤勝信財務相
野田氏に禁煙方法を教わるよう
ところで、私はこの質疑のあとに、午前中の発言の訂正をしました。昼に事務所に電話があり、野田代表は4、5年前にタバコをやめたとのことでした。お詫びしたうえで、総理に、
「野田さんは偉いですね。総理はいよいよ独りぼっちになっちゃった(一同、笑い)。どうします? 野田さんはやめた実績持っているから、禁煙のやり方を教わってください。禁煙というのは、今、禁煙治療といって、保険適用にもなるんです。
総理、それぐらい自分の健康、受動喫煙、そして為政者としての振る舞いを考えると、しっかりと禁煙に挑戦してもらわなきゃいけない」
と伝えました。
政府の会社がロシアに一番の財政支援
そして次に、JTがロシアで最大の納税企業となり、日本政府のウクライナ支援姿勢と矛盾する事態についても問い質しました。
JTがロシア政府に年間4千億円を納税している現状が、ウクライナへの支援努力を損ねていると指摘しました。
松沢 じゃ、総理、これも総理じゃないと答えられませんよ。
JTのロシアでの事業ですが、JTはロシアでナンバーワンのタバコ会社になってしまいました。
JTは、ロシアに年間4千億円を納税しています。これは、ロシアの海外企業の中でナンバーワンですよ。そして、ゼレンスキーはこれをどうにかしてくれと言っている、4千億円といったら戦闘機100機買えると言っているんですよ。
日本の外交姿勢は「ウクライナ支援」、そして「ロシアへの経済制裁」と言っておきながら、日本政府の「特殊会社」が、ロシアのナンバーワン納税企業になってロシアの経済と財政に大貢献してしまっている。
なのに、財務省と外務省は、今度は「民間会社だから仕方ないだろう」と言っているんです。
さあ、総理、これに対して、このままでいいんですか? ウクライナ支援をすると言っているのに? それをお答えください。
委員長 時間が参っております。簡潔にお願いいたします。
財務大臣 まず、JTの今後の事業展開については、まさに委員ご指摘のとおり、国際的な活動を行う上場企業として、現在のロシア、ウクライナ情勢、国際社会の動きなど踏まえて、同社の自主的な経営判断で適切に対応していくべきと考えております。
その上で、同社のロシア事業については、すでに新規の投資やマーケティング活動は停止し、現在、同社グループ経営からの分離を含めた選択肢の検討が行われていると承知をしておりますので、政府としてはこうした検討状況を注視していきたいと考えています。
松沢 JTの社長を当委員会にぜひとも呼んでいただきたい。そのことをお願いして、理事会で諮っていただきたいと思います。
質問を終わります。ありがとうございました。
政府がJTを通してロシアを支援している結果になっているこの追及に対して、政府の答弁は「JTの自主的判断に委ねる」とするもので、明確な対応策を示すには至りませんでした。
この問題については、JT社長の国会招致を求めて質疑を締めくくりました。
今回の質疑を通じて、タバコ規制の遅れやJTの「特殊会社」としての存在が抱える問題を浮き彫りにできたと考えます。
これからも、国民の健康と公正な政策実現のため、引き続き取り組んでまいります。
※「特殊会社(特殊法人)」=国策上必要な公共性の高い事業だが、行政が行うより会社形態で運営する方が合理的であると判断され設立されている法人。後に民営化して普通の会社に移行させる可能性もあり、会社法に基づく「株式会社」形態で設立される。
☆委員会の中継録画は公開されています。参議院のサイト、または文字起こしと各報道をまとめた「受動喫煙撲滅機構」のサイトニュースで確認できます。https://www.tabaco-manner.jp/cate_news/28842/
[『STOP受動喫煙新聞』より付記]
各報道とも首相の禁煙意識の答弁の可笑しさだけを報道したなか、松沢理事のお膝元の神奈川県=松沢理事が県知事時代に日本初の罰則付き屋内受動喫煙防止条例を制定させた=の地元紙では、ネット報道のみ、首相の卒煙に期待の声があることと、タバコを推進する議員の会からの批判があったことも触れていました。
愛煙家の石破首相、完全禁煙あと一歩 松沢氏質問に「1日数本レベル」
=『カナロコ(神奈川新聞)』’24年12月16日(月)17:33=
〝石破茂首相は16日の参院予算委員会で、就任以前のヘビースモーカーを脱し「1日数本程度」まで喫煙を減らしていることを明らかにした。禁煙論者で日本維新の会の松沢成文氏(神奈川選挙区)への答弁。歓迎の声が上がる一方、与野党議員の愛煙家グループ「もくもく会」メンバーなどからは煙たがる意見も出た〟
(中略)
〝霞が関では「会議などでの首相の喫煙場所や時間の確保に苦労している」(内閣府スタッフ)のが実情で「禁煙なら大きな行革だ」(同)と期待が広がっている〟
〝一方、もくもく会のメンバーは「周囲の受動喫煙を防げば喫煙自体には問題ないのに…」と論戦に迷惑そうだった〟

’24年12月16日、参議院予算委員会で首相(左端前列)を追及する松沢理事(右)
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