『STOP受動喫煙新聞』第48号(’24年10月発行)掲載=脱法的営業が常態化する「喫煙目的店」⑤(政府追及編)=法の不備について、国に回答を求めました(その1)
脱法的営業が常態化する「喫煙目的店」⑤
(政府追及編)=法の不備について、国に回答を求めました(その1)
公益社団法人 受動喫煙撲滅機構 理事
前神奈川県知事・参議院議員
「国際基準のタバコ対策を推進する議員連盟」幹事長 兼 事務局長
松沢 成文
=発行・「公益社団法人 受動喫煙撲滅機構」= https://www.tabaco-manner.jp
※ 前回を「最終回」としていましたが、新たな動きがありましたので続報いたします。
これまで4回にわたり、「喫煙目的店」という名のもとに、脱法的に営業する、全席で喫煙可能な居酒屋などの飲食店の問題点と、改善策の例を取り上げてきました。
おさらいしますと、現在の「改正健康増進法」では、大規模店や同法全面施行後の新規開業店は「全席禁煙」としなくてはなりませんが、同法には、飲食を主にしない「喫煙目的店」(いわば喫煙専用店)であれば席での喫煙可能の営業ができるという例外措置があるため、それを悪用し、本来「禁煙」営業必須である大規模や新規の飲食目的店(主食を出す)が、ニセの「喫煙目的店」表示をすることで「全席喫煙可能」とする、そんな脱法・違反店が全国的に多発している、という問題です。
違反には、高額の罰則(最大50万円)の適用もあることが記されています。
法の不備で取り締まれない?
厚労省へ要望する自治体も
しかし、前回も述べたように、既にこの制度が始まってから4年が過ぎた現在もなお、違法な「喫煙目的店」に対して、罰則の適用のみならず、ほとんどの自治体で、勧告すら出されていないのです。
取締まりすら行われていないことの原因は、前にも述べたように、施行後、担当する自治体、保健所の職員が感染問題の対応で忙しかったという理由もあったでしょうが、現在ではそれよりも、「健康増進法の規定や定義があいまいなため、明確な基準に基づいて施設への指導ができない」としている、という問題があります。
そのため、これまで東京都等の自治体は、厚生労働省へ、喫煙目的施設の定義や要件を明確化することを求めてきました。
内閣へ質問書を提出
こうした状況を受け、私は今年6月21日、内閣へ、下記5点を問う「質問主意書」を提出しました(以下、要旨)。
一 令和二年(2020年)四月に本法が全面施行されて以降、喫煙可能営業を許可されない、大規模店や新規開業店で飲食を主目的とする居酒屋等が、喫煙場所の提供を主たる目的とする「喫煙目的施設」を標榜し、違反となる飲食席での喫煙可能営業をする例が多数発生しており、これについて都道府県および保健所設置市区への苦情や情報提供が増加している。
その実態について、政府の認識を明らかにされたい。
二 同法で記された「喫煙目的施設」に関する定義および要件を満たしていない喫煙目的施設の管理権原者等に対しては、同法七十条以下において過料等の罰則が適用されることになる。しかし、「喫煙目的施設」の定義および要件が曖昧であることから、都道府県知事等が、同法に違反すると思慮される施設の管理権原者等に対し、罰則へとつながる可能性がある、勧告、命令等を行うことを躊躇している。
この現状について、政府の認識を明らかにされたい。
三 飲食を主目的とする居酒屋等が、喫煙場所の提供を主たる目的とする「喫煙目的施設」を標榜し、違法の営業を行う例が多数発生する中、都道府県知事等が、その管理権原者に対し、同法第三十六条で定める勧告、命令等を適切に行うことができない状況について、東京都や横浜市等は同法および同施行令における「喫煙目的施設」の定義および要件を明確化することを厚生労働省へ求めている。
この各自治体の要望に対する、政府の見解を明らかにされたい。
四 同法および同法施行令の他、厚生労働省は、平成三十一年(’19年)四月二十六日に、「改正健康増進法の施行に関するQ&A」(以下「Q&A」)を公表したが、喫煙目的施設に関する定義および要件を補足する内容としては不十分であり、かつ、改正された同法が令和元年(’19年)七月一日に一部施行されて以降、一度もこのQ&Aは更新されていない。
その理由を明らかにされたい。
五 同法および同施行令における「喫煙目的施設」の定義および要件が曖昧であることから、「喫煙目的施設」を名乗りながら飲食を主目的とする違法営業の居酒屋等の管理権原者に対し、都道府県知事等が、同法が定める勧告、命令等を適切に行うことができないことに加え、対応する地方自治体によって、法令の解釈や運用が異なっていることも問題となっている。
そこで、同法および同施行令における「喫煙目的施設」の定義および要件を、地方自治体への「通達」等により明確に示すべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
次回、これに対する政府の回答をご紹介します。
(’24年9月19日記)

内閣へ提出した「質問主意書」の表紙
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