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松沢しげふみ(松沢成文)政策提言 【経済政策は損して得取れ】「インベスト神奈川」の挑戦  世界的なメーカーの研究・開発施設を誘致する方策(再掲)【2022参院選 神奈川】

経済成長がほとんどできなかった平成の30年間。まさに失われた時代。一部期間を除き、政権を担った自民党は何をしてきたのでしょうか。

「経済政策は損して得取れ」

松沢が神奈川県知事時代には「インベスト神奈川」という政策を推進。地域に大きな経済循環を起こしました。

当時の紹介記事を再掲させて頂きますので、ぜひご一読下さい。

 

<『Voice』2006年1月号掲載>

2005年8月22日、私は、神奈川県庁で、キヤノン株式会社の御手洗富士夫代表取締役社長と共同の記者会見を開いた。この会見は、キヤノン(株)が、本県が用意した総合的な企業誘致政策「インベスト神奈川」の制度を活用して、県内の平塚市に、次世代薄型ディスプレイ“SED”の研究所新設の決定を発表するためのものであった。
この「インベスト神奈川」の制度を活用して、本県への立地や再投資を決定した企業は、昨年12月から10か月間で17社18件に上る。100億円以上の投資には、富士写真フイルム(株)をはじめ、味の素(株)、(株)リコー、旭硝子(株)、日産自動車(株)、ソニー(株)、横河電機(株)、そして今回のキヤノン(株)といった世界的な企業が名を連ねており、初期投資で約3,400億円、操業開始後に発生する雇用は、常用雇用者だけで1万5千人が予定されている。
「インベスト神奈川」は、このように順調なスタートを切ることができた。しかし、その舞台裏にはさまざまな努力と決断があったのである。
神奈川県は、横浜開港以来、日本の近代化をリードしてきた産業先進県であり、戦後は、京浜工業地帯を中心に高度経済成長を支えてきた。
しかし、産業構造の転換とバブル経済崩壊後の不況により、近年大きな危機に瀕しており、特に県の基幹産業である製造業は崩壊してしまうおそれさえある。
本県の産業は、かつては電気機械、化学などの製造業が中心だったが、近年は、経済のサービス化の下で、製造品出荷額、事業所数、従業者数がともに減少し続けている。特にこの10年間で、これらの数字は、県全体で約2割、中心地の京浜臨海部に限れば約3割も減少している。これは、いわゆる工業制限3法により、国が、京浜臨海部の企業に対する追い出し政策を採っていたことも大きな要因であるが、このままこの傾向が続けば、30〜40年もすると神奈川から製造業が消滅してしまう勢いである。
こうした状況の下で、これまで神奈川の産業政策は、頭脳センター構想やKSP(かながわサイエンスパーク)など先進的な取組をしてきたが、企業ニーズをワンストップで受け止め、立地をサポートするような体制は貧弱であったと言わざるを得ない。
また、立地に向けたインセンティブ(優遇策)の水準も低かった。2003年4月から不動産取得税の軽減は制度化していたが、企業の県内進出や県内企業の再投資に対する助成制度がなく、融資も原則中小企業というのが実状であった。
もちろん、経済基盤から見ると神奈川のポテンシャルは極めて優れている。県内の総生産は2,452億ドルで国内4位(2001年度、内閣府試算)、人口は870万人で全国3位、流行に敏感な消費志向を有している。また、2009年に国際化する羽田空港、国内有数の横浜港など、国際的環境も整っている。何より、人材の豊富さと研究機関の集積は、全国トップクラスといってよい。こうしたポテンシャルを最大限に生かした戦略が今こそ求められているのである。

産業再生による地域発展を

バブル崩壊後の不況により本県財政も苦しい状況が続いている。しかし、こういうときこそ将来をしっかり見据えて政策選択を行ない、選択した政策に思い切った投資をする「逆転の発想」が必要である。「選択と集中」により、限られた資源を先行的に産業政策に投資して、県内への産業集積による税源を涵養し、将来の政策展開を充実させていくのである。「産業再生なくして地域発展なし」というポリシーの下に、私は大胆な投資政策を決断した。
それが「今後五年間の企業立地件数を過去五年間の二倍」にすることを目標に掲げ、2004年10月に発表した企業誘致のための総合的な政策パッケージ「インベスト神奈川」(神奈川県産業集積促進方策)である。
「インベスト神奈川」は、単なる助成制度にとどまらず、投資に対する助成・融資・税の控除といった「経済的インセンティブ」、道路や工業用地などの社会資本整備、構造改革特区の活用、産業総合研究所による技術支援などの「産業活性化のためのインフラ・環境整備」、さらに、企業誘致ワンストップステーション、海外企業誘致ステーション、ビジネスサポートセンターなどの「誘致体制の整備・強化」という三本の柱から構成された、総合的な企業誘致・投資促進プログラムである。言い換えるなら、本県が持つ資源・ツールを最大限生かして、神奈川に立地するメリットを最大化し、デメリットを最小化する政策パッケージである。
その特徴は、第一に中小企業だけでなく大企業をも真正面から対象とし、第二に県外からの企業誘致のみでなく、県内企業の再投資の促進と流出防止に力点を置くことにある。そして第三に、本県経済の強みである研究機関の集積をさらに拡大するため、企業の研究・開発施設の誘致をターゲットとし、神奈川県経済の特色を一層鮮明化させることにある。
神奈川が、東京と本社機能の誘致を競い合っても、首都東京には経済の中枢機能が集積しており勝ち目は少ない。また、量産工場の誘致を地価や人件費の安い地方と争っても、神奈川の分は悪い。しかし、研究・開発機能であれば、神奈川県には既存の集積があり、首都に隣接し人材も豊富である上に、高い技術力を持つ中小企業のサポートが強固であるため、他県と比べて圧倒的な優位性を持っている。そして、過去の実績では、研究所の場合、平均従業者数は工場の2倍に達するほか、投資規模や納税力が大きく、地域における雇用創出効果も大きい。さらに、研究・開発機能は企業の頭脳であり、リストラ傾向の中でも廃止や移転の可能性が小さい。その結果、事業の継続性が保障されるため、地元中小企業との関係が構築されやすく、従業員が近隣に住居を構えやすく、職住接近によって地域コミュニティの醸成にも資するであろう。
神奈川県の産業政策の将来像である「世界をリードする新たな産業」を目指すためには、研究・開発分野で勝負するのが最良の道なのである。
この「インベスト神奈川」を策定する中で、私が特にこだわったものが二つある。
その一つは、スピードである。企業の設備投資意欲が回復してきたこの時を逃さず、求められる政策を具体化するスピードである。どんなによい政策でも、タイミングを逃しては期待される効果を発揮することはできない。特に、企業の設備投資意欲は景気と連動しており、政策環境が変化しやすい。
そこで、2004年4月に庁内の若手職員のワーキンググループを立ち上げてから、10月の策定に至るまで、「インベスト神奈川」を実質6か月で取りまとめた。
そして、こうして策定した「インベスト神奈川」に位置づけられた個々の施策についても、一斉にスタートすることにはこだわらず、できるものから順次具体化することとした。例えば、施設整備等助成制度は要綱設置で2004年11月から、県税の軽減は条例設置で2005年1月から、融資制度は新年度当初予算で4月からといった具合である。
実際、政策の具体化を急いだことで、大規模投資の県外流出を防ぐことができた。例えば、先端化学企業である日本ゼオン(株)は、次世代研究所の建設を計画し、既に他県に用地の手当も済ませていたが、「インベスト神奈川」の具体化により、12月に急遽計画を変更し、同社が事業所を構える京浜臨海地域に、100億円規模の再投資を決定したという。また、世界的な食品企業である味の素(株)は、国内はもとより、ロシアやタイといった海外での立地も含めて、次世代の生産・開発施設の検討を進めていたが、「インベスト神奈川」の具体化を受けて、翌年1月に川崎工場の隣接工場跡地に400億円規模の研究所建設を決定したのである。
こだわりのもう一つは、インパクトである。それは、神奈川が企業誘致に対し積極的であるという姿勢を、全国の企業に端的に示すということであり、“神奈川が動き始めた”という明快なメッセージが必要だということである。そのため、全国トップレベルである限度額80億円に及ぶ施設整備への助成制度や、不動産取得税の3/4減免、さらに企業が求めているスピードを受けとめられるような新たな組織−企業誘致ワンストップステーションの設置を決定したのである。
その結果、「インベスト神奈川」の内容を『日本経済新聞』(2004年9月15日付け)が一面で報道するなど、多くのメディアで取り上げられ、神奈川のメッセージは、確実に伝達されていった。

鍵握るトップセールス

このようにして打ち出した「インベスト神奈川」は、幸い、多くの企業に受け入れられ、活用されていることは、冒頭にも記載したとおりである。
では、企業側は「インベスト神奈川」をどう受け止め、神奈川への立地を決めたのだろうか。
「インベスト神奈川」の助成制度を最初に活用して、神奈川県西部の開成町への研究所(先進コア技術研究所)の立地を決定したのは富士写真フイルム(株)であるが、昨年12月2日の記者会見で、古森社長は、「『インベスト神奈川』は企業にとってありがたい制度だが、それだけで立地を決めたわけではない。県や町から熱心に誘致を受け、当社の他の拠点との距離も近かった」ことを、立地の理由に挙げた。
また、日産自動車(株)は、県中央部の厚木市・伊勢原市に新たな研究所(日産アドバンスド・テクノロジー・センター)の建設を決定したが、会見に臨んだ同社の伊佐山建士副会長は、「事業の候補地は国内に止まらないが、神奈川にはビジネスをやりやすい環境があり、『インベスト神奈川』は、事業地選定の大きなサポートとなった」ことを明らかにした。
同じく県中央部の海老名市への新たな研究所(リコー・テクノロジー・センター)建設に300億円の投資を決定した(株)リコーの桜井正光社長は、「事業地周辺には、今後、さがみ縦貫道路(圏央道)ができるなど、県のインフラ整備が進んでいると聞いている。最終的な意思決定に大きな影響を与えたのは、『インベスト神奈川』である」と述べている。
もちろん、「インベスト神奈川」がすべてではない。富士写真フイルム(株)の古森社長が述べたように、水面下のスピーディな売込みが功を奏しているというのが実態である。
事柄の性格上、個々のケースについては詳述できないが、たとえば100億円の投資となった日本ゼオン(株)の次世代研究所の場合には、当初、昨年11月に誘致担当の職員が同社を訪問し「インベスト神奈川」のセールスを行った際には、新たな研究所については他県に流出する可能性が高いことを感じ、その旨を上司に報告し、翌日、県の商工労働部長が企業を訪れ、研究担当の役員と面会した。その内容が私に報告されたため、その後、私が同社のトップの方々にセールスを行い、県内での研究所建設を決断していただいた。
横河電機(株)は、今年6月、県北部の相模原市に、光通信用デバイスや化合物半導体の研究所を新設するため250億円の投資を決定した。県では同社が神奈川を含めた複数の候補地をリストアップし、検討を進めているという情報をつかんだが、同社はこれまで県内に拠点を有していなかった。そのため、まず誘致担当職員が立地計画策定に対する補助制度の活用を勧め、候補地の適正についての調査結果が出た今年の4月に、県の商工労働部長が同社の役員を訪ね、神奈川への投資を強く働きかけた。その後も、地元市とも調整しつつ、社内検討の進み方を見ながら、私から同社の内田社長へお願いをして、投資が決定されたという経緯がある。こうしたタイミングが重要だったと思う。
私自身、県内立地を決めていただいた企業のトップの方のほとんどを直接訪ね、トップセールスを行っている。その前段には企業誘致室の職員が戸別訪問や説明会を繰り返し行い、可能性がありそうな企業を発掘し、担当の部課室長が交渉を重ねるといったチームプレーで活動を展開している。しかし、トップの直接交渉が対応のスピードをあげるとともに、企業側の信頼を得て、効果を上げたことも否定できないと思う。
「インベスト神奈川」の展開範囲は、国内にとどまらない。むしろ、企業活動がグローバルになり、国内でも多くの海外優良企業が活発に事業活動を行っている現在、「インベスト神奈川」を世界的に展開することは当然であろう。
その成果を、2005年7月に発表できた。ダイムラークライスラー初の海外研究開発拠点を横浜市内に誘致できたことである。昨年11月に本県と友好提携関係にあるドイツ・バーデンビュルテンベルク州に行き、州都シュツットガルトの郊外にあるダイムラークライスラーの本社工場を訪ねて、神奈川のポテンシャルの高さと「インベスト神奈川」の特色を私から直接アピールした。もちろん、帰国後も私や職員が企業側のニーズを受け止め、東京にある日本支社とも誘致交渉を続けた。しかし、昨年の本社訪問がなければ、実現はありえなかったと思う。
また、フランス・オードセーヌ県のサルコジ知事からは、フランス企業の進出の窓口となる神奈川事務所の設置の意向が示されたので、新たに今年度、本県で神奈川グローバル・パートナーシップ・オフィスを立ち上げ、5月の横浜でのオードセーヌ県日本経済事務所開設につながった。中国遼寧省の大連においては、日本進出の意思を持つ中小企業(主にコンピューターソフト関連会社)を集め、神奈川投資セミナーを開いた。そのなかには10月に横浜市内に「新隆ジャパンシステムサービス」を設立したソフト会社「大連新隆計算機技術」や、現在神奈川進出を検討中の企業もある。
トップセールスの結果、経済交流が活発になり、さまざまな可能性が出てきた。そこで、この夏、米国メリーランド州に新たに事務所をオープンした。これを含めて世界4カ所の駐在員事務所を「海外企業誘致ステーション」と位置づけ、海外企業の誘致に向けた取組を最優先課題とした。
さらに、海外企業の県内の受け皿としては、昨年4月、ジェトロとの連携による全国初の地方版IBSC(かながわビジネスサポートセンター)を、横浜の産業貿易センター内にオープンしており、「インベスト神奈川」の世界的な政策展開に向けた体制も、ほぼ整備することができた。

経済波及効果とコスト

こうして展開されている「インベスト神奈川」による企業誘致・投資促進の大作戦であるが、見込まれる経済波及効果は、極めて大きい。
(株)浜銀総合研究所の推計結果によれば、目標どおり県内への産業集積がなされた場合、県内への経済波及効果は、10年間(2005〜2014年)で6兆2千億円に及ぶとされている。また、企業操業による新規雇用は5万8千人程度であり、施設整備の建設投資により一時的に増加する雇用を加えると10万人近くになる。さらに、これに伴う税収効果は、県・市町村税合計で15年間(2005〜2019年)で1,100億円を超えると推計されている。
しかし同時に、「インベスト神奈川」の実行には多額の経費が必要となる。5年間の時限的な政策展開とはいえ、目標どおりの企業誘致が実現すると、600億円を超える歳出予算が必要となると試算している。これは、財政難に直面している本県にとって、大きな負担ではあるが、神奈川の将来の発展に向けた大きな先行投資だと考えている。
「インベスト神奈川」はスタートしてまだ1年しか経過していないが、すでにいくか波及効果が見え始めている。
同じく(株)浜銀総合研究所が今年8月に出した「2005・2006年度の神奈川県内経済見通し」によれば、これまで「インベスト神奈川」によって投資を決めた企業(=「インベスト企業」)の投資計画により2005年度の県内名目設備投資が3.9%押し上げられており、引き続き伸びが続くと予測した上で、県内総生産は4年連続のプラス成長となると報告されている。
この傾向は、たとえば、京浜臨海部地域の企業への土地利用に関するアンケート調査でも裏打ちされている。前回2001年調査時と比較して、2005年調査では企業が保有する遊休地等の面積が1/3に減少したのである。
また、日経新聞が「ビジネスホテル厚木にラッシュ」との見出しで報じたように、厚木市及びその周辺では、日産自動車(株)、ソニー(株)や(株)リコーなど、「インベスト神奈川」を活用して立地を決定した企業の大規模な研究開発施設が建設予定であり、国内や海外からの研究者の来訪などによる需要増を見込んで、ビジネスホテルや賃貸マンションの建設も進んでいるという(平成17年8月12日付け)。
インベスト企業は、建設段階から様々な場面で県内中小企業の活用や地域経済の貢献にも配慮しており、地域への波及効果は、今後、県民が実感できるようなより鮮明なものとなってくるだろう。

神奈川R&Dネットワーク構想

「インベスト神奈川」が企業の研究・開発施設をターゲットとしていることから、助成制度は、生産施設より研究・開発施設を優遇している。例えば、助成率は、工場は10%であるが研究所は15%とし、助成上限額も50億円に対して80億円とした。
これまでに申請された18件のうち11件が、富士写真フイルム、日本ゼオン、東京応化工業、味の素、リコー、旭硝子、日産自動車、ソニー、横河電機、山武、そしてキヤノンと世界のトップメーカーの研究所を始めとする研究・開発施設であった。この神奈川に、世界をリードする先端産業の研究所の集積を一層図るための戦略は、これまでのところ奏功している。
しかし、企業誘致が成功したところで終わりにしてはならない。今日では、多くの県が、企業誘致に精力的に取り組んでいるが、中小企業を含めた地域産業の活性化はそれだけで自動的に実現できるものではない。そこで、インベスト企業を新たな政策資源として展開しようとしているのが、「神奈川R&Dネットワーク構想」である。
これは、インベスト企業を始めとする県内の民間研究所と県の産業技術総合研究所をはじめとする公的試験研究機関、さらには技術力のある中小企業、そして工科系大学等が技術面での連携を促進し、高付加価値型の産業創出などによる地域産業のさらなる活性化を目指すという新たな構想である。
具体的には、これらの機関のネットワークづくりに始まり、大企業から中小企業への高度技術の移転、中小企業のオンリーワン技術の大企業での活用といった技術連携、大企業同士の共同研究に大学が参加するような新たな産学公の仕組みづくりなどに取り組んでいる。
この取組には、インベスト企業側も積極的に参画している。今年7月20日には、インベスト企業の研究所長や技術担当役員等が参加し、日産自動車の大久保宣夫CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)を座長とする「神奈川R&D推進協議会」を立ち上げた。10月19日には、富士写真フイルムの古森重隆社長を始め、多くの関係者に参加していただいて、この構想に関するシンポジウムを開催した。
また、県では、中小企業への技術移転のために、今年2月に日産自動車(株)と、5月には東京応化工業(株)と、それぞれ共催で技術フォーラムを開催し、多くの県内中小企業が参加した。さらに、中小企業のオンリーワン技術の大企業による活用を図るため、今年11月には、ソニーへの技術提案会を開催するなど、構想が徐々に具体的で大きな動きとなりつつある。以上のような展開を通じて、神奈川の魅力が、大企業、中小企業の双方にとって、さらに増していくものと期待している。
すでに国内では、デジタル家電メーカーや自動車メーカーを中心に高付加価値製品の生産を国内で行おうとする国内回帰の動きも出始めているが、これまでこうした動きが神奈川への産業集積に結びついてこなかった。
しかし、このR&Dネットワーク構想に対するインベスト企業と県内中小企業の高い関心を見ると、今後、中小企業を巻き込んだ県内への産業集積が確実に進んでいく手応えを感じている。
「インベスト神奈川」は、単なる企業誘致・投資促進施策にとどまらない。それは、大きな発展可能性を秘めた、神奈川の将来を見据えた産業政策である。
そして、「インベスト神奈川」の成果を発展させていった究極の姿として、今、私が考えているのは、神奈川を、自動車、電気機械、IT、バイオ産業などのグローバル企業の研究開発施設やその関連企業が立地し連携する一大集積地に発展させ、日本の産業、世界の技術開発を先導していく姿だ。
現在進めている取組の延長線上には、新たな技術の開発や産業の創造、さらにはそれを可能とする人材や技術の開放的ネットワークの形成があり、オープン・イノベーションの場としての神奈川がある。
それにより、神奈川への高度先端産業の集積がより一層進み、高度先端産業分野で神奈川が世界をリードしていく。これが私の夢である。と同時に、多くの県民の望みであると思う。「インベスト神奈川」をこの神奈川の壮大な挑戦の礎にしたいと考えている。

 

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